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2025.07.22

コーヒーの精製方法 パルプド・ナチュラルとは?

コーヒーの精製方法 パルプド・ナチュラルとは?

コーヒーの香味を形づくる重要な工程として注目されているのが、「精製方法」です。
その中でも近年注目を集めているのが、「パルプド・ナチュラル(Pulped Natural)」という精製方法です。
ナチュラル製法とウォッシュト製法の中間のような存在で、ユニークな風味を生み出すこの方法は、特にブラジルなどで多く採用されています。

今回は、パルプド・ナチュラルの工程や特徴、風味の傾向、他の精製方法との違いなどについて、わかりやすく解説します。自分の好みに合ったコーヒー豆を選ぶヒントにもなるので、ぜひ最後までご覧ください。

パルプド・ナチュラルとはどんな精製方法?

パルプド・ナチュラルは、コーヒーチェリーの果肉を部分的に取り除き、粘液質(ミュシレージ)を残したまま乾燥させる精製方法です。
ナチュラル製法(乾式)は果肉を丸ごと残したまま乾燥する一方、ウォッシュト製法(湿式)は果肉もミュシレージも洗い流してから乾燥します。その中間的な立ち位置にあるのが、このパルプド・ナチュラルです。

主な工程


1.収穫
完熟したコーヒーチェリーを収穫。手摘みや機械収穫が行われます。

2. 果肉除去(パルピング)
チェリーの外皮と果肉を取り除く工程で、粘液質(ミュシレージ)は残されます。

3. 乾燥
ミュシレージを付けたまま乾燥させます。アフリカンベッドやコンクリート上で天日乾燥され、発酵やカビを防ぐためにこまめに攪拌されます。

4. 脱殻・選別
十分に乾燥した後、内殻(パーチメント)を除去し、選別して出荷されます。

粘液質を残したまま乾燥させることで、果肉由来の糖分や風味成分がコーヒー豆に移り、複雑でバランスのよい味わいが生まれます。

パルプド・ナチュラルの味の特徴とは?

パルプド・ナチュラルで精製されたコーヒー豆は、ナチュラルとウォッシュト両方の特徴を併せ持ちます。
果実味や甘みを持ちながらも、過度なクセがなく、バランスのとれた風味が特徴です。

主な味の傾向

まろやかな果実感
ナチュラル製法のようなベリー系の果実味がありながら、発酵由来の強いクセは抑えられています。

クリーンな口当たり
ミュシレージが影響して滑らかな質感が生まれます。後味がすっきりしていて、冷めても飲みやすいのが魅力です。

甘みとコクの両立
甘みのある風味と中程度のボディ感がバランスよく共存しており、ブラックでもミルクを加えても美味しく楽しめます。

とくにブラジル産の豆では、ナッツ系やチョコレートのような風味に加え、キャラメルのような優しい甘みが感じられることが多く、エスプレッソやカフェオレとの相性も抜群です。

他の精製方法との違い

ナチュラル製法との比較

ナチュラルは果肉をつけたまま乾燥させるため、濃厚な果実味と発酵香が特徴です。
一方、パルプド・ナチュラルは果肉を取り除いてから乾燥させることで、よりクリーンで飲みやすい仕上がりになります。

・ナチュラル:力強い果実感と独特な風味

パルプド・ナチュラル:フルーティーながらもすっきりとした味わい

ウォッシュト製法との比較

ウォッシュトは粘液質まで完全に除去し、水で洗浄してから乾燥させる方法。
明るい酸味と透明感のある風味が特徴ですが、パルプド・ナチュラルはそこにわずかな甘さやコクが加わる点で異なります。

ウォッシュト 爽やかで軽快な酸味

パルプド・ナチュラル 酸味に甘さやボディが加わり、より複雑な味わい

どの地域で採用されている?

この精製方法は、特にブラジルで広く使われています。
大規模農園では機械収穫が主流であり、効率よく雑味の少ない豆を生産する方法として、パルプド・ナチュラルは非常に適しています。

さらに、中米のコスタリカやエルサルバドルなどでは「ハニープロセス」として発展しており、ミュシレージの残し具合によって「ブラックハニー」「レッドハニー」などのバリエーションも登場しています。

パルプド・ナチュラルを楽しみたい方へ

以下のような方に、この精製方法のコーヒーはおすすめです。

・フルーティーな風味が好きだが、クセの強さは控えたい

・クリーンで飲みやすく、なおかつ甘みやコクも楽しみたい

・ミルクとの相性が良い豆を探している

抽出方法はハンドドリップがおすすめです。抽出温度や時間を少し変えるだけで、酸味を際立たせたり、甘みを強調したりと、自分好みの一杯に調整できます。
また、ミルクと合わせることでまろやかさが引き立ち、カフェオレやラテにもぴったりです。

まとめ:精製方法に注目するとコーヒー選びがもっと楽しくなる

パルプド・ナチュラルは、ナチュラル製法の果実感とウォッシュト製法のクリーンさをあわせ持つ、バランスに優れた精製方法です。
産地や品種だけでなく、精製方法に目を向けることで、コーヒーの奥深さをより感じることができます。

次にコーヒー豆を選ぶときには、ぜひ「パルプド・ナチュラル」という表示にも注目してみてください。きっと、新たなお気に入りの味に出会えるはずです。

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