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コーヒーの精製方法 スマトラ式

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コーヒーの味わいに個性を与える要素のひとつが「どのように精製されたか」です。
特に、インドネシアで用いられる「スマトラ式」と呼ばれる手法は、他の精製方法には見られない独特のプロセスで注目されています。
この記事では、スマトラ式の特徴や精製工程、その味の魅力について解説します。産地や品種に加えて「精製方法」にも注目して、より深くコーヒーを楽しんでみましょう。
スマトラ式とは、主にインドネシアのスマトラ島で採用されている精製方法です。現地では「ギリン・バサ(Giling Basah)」とも呼ばれており、これはインドネシア語で「湿ったままの脱殻」という意味を持ちます。
この手法は、高温多湿で雨の多いインドネシアの気候に適した独特の精製工程で、主に小規模農家が実践しています。
乾燥に時間がかかる環境の中で、効率的かつ実用的な方法として発展してきたといわれています。
スマトラ式の大きな特徴は「水分を含んだ状態の豆を脱殻すること」にあります。以下にその手順を紹介します。
完熟したチェリー(コーヒーの実)を収穫し、果肉を取り除きます(パルピング)。ここまでは水洗式などと同様の処理です。
果肉除去後、豆の表面にミューシレージと呼ばれる粘質物が残ります。スマトラ式ではこの状態で、短時間(半日〜1日程度)袋などに入れて簡単に発酵させたあと、水で軽く洗い流します。
この段階で豆の含水率は約40〜50%とかなり高く、通常であれば乾燥させてから脱殻するところを、スマトラ式ではこの湿った状態で脱穀作業を行います。これが、他の精製法にはないユニークな工程です。
脱殻されたグリーンビーンズ(生豆)は、地面やアフリカンベッドなどに広げて天日で乾燥させます。天候に大きく左右されるため、見た目や風味に農家ごとの個性が出やすくなります。
スマトラ式で精製されたコーヒーは、他の方法にはない独自の味わいを持っています。主な特徴は以下の通りです
・
重厚でしっかりとしたボディ ・
スパイスやハーブのような複雑な香り ・
土や木を思わせるアーシーな風味 ・
酸味は控えめで苦味が主体
このような風味は、深煎りにするとより魅力が引き立ちます。ミルクとの相性も良く、カフェオレやカフェラテ、アイスコーヒーにも適しています。
スマトラ式の風味の鍵は「水分が多い状態で脱殻する」という工程にあります。
通常の精製方法では、乾燥後に脱殻することで風味が安定しますが、スマトラ式ではその前に脱殻するため、豆の組織に微細な変化が起こり、結果としてユニークで複雑な味わいが生まれます。
また、インドネシアの土壌や気候の影響も加わり、同じスマトラ式でも産地や農園によって個性の違いを楽しむことができます。
スマトラ式のコーヒーは、酸味が強いコーヒーが苦手な方や、コクや深みを重視する方にぴったりです。
特に、香りに奥行きがあり、口当たりがしっかりしたコーヒーを探している方におすすめ。
また、ブラックで飲むのはもちろん、ミルクとの相性も抜群なので、さまざまな飲み方で楽しめます。
スマトラ式は、インドネシアの風土と小規模農家の知恵が生んだ、非常にユニークな精製方法です。湿った状態で脱殻するという他にはない工程が、深いコクと個性的な風味をもたらします。
他の精製方法とは一味違うコーヒーを試してみたい方は、ぜひスマトラ式で仕上げられたコーヒーを手に取ってみてください。日常のコーヒータイムが、より豊かで味わい深いものになるはずです。