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焙煎機による味わいの違い

焙煎機による味わいの違い
― コーヒーの一杯を決める重要なファクター ―
コーヒーの味わいを大きく左右するのは「豆の産地」や「焙煎度」だけではありません。実は、豆を仕上げる際に使用する 焙煎機の種類や構造 もまた、風味の特徴を決める大切な要素です。同じ豆を同じ焙煎度に仕上げても、焙煎機の違いによって香りや口当たりに差が生まれるのです。本記事では、代表的な焙煎機の特徴を整理しながら、味わいの違いについて詳しく解説します。
ドラム式焙煎機:最も一般的なスタイル
世界中のロースターで最も広く使われているのが ドラム式焙煎機 です。内部のドラム(円筒)が回転し、ガス火や電気ヒーターで加熱しながら豆を焙煎します。熱はドラムの金属を通じた伝導熱と、内部の熱風によって伝わります。
ドラム式の特徴は「バランスの良い仕上がり」。熱の当たり方が比較的均一で、豆の中心までじっくりと熱を通すことができます。その結果、ボディ感がしっかりしながらも香ばしさと甘みが調和した味わいに仕上がりやすいのです。クラシックな深煎りや、ブレンドの安定感を求めるロースターに好まれています。
熱風式焙煎機:クリーンで鮮やかな風味
一方で、近年注目を集めているのが 熱風式焙煎機。ドラムを使わず、強力な熱風を豆に直接吹き付けて焙煎します。熱が素早く豆全体に均一に届くため、焙煎時間を短くコントロールできるのが特徴です。
味わいの特徴は「クリーンで透明感のある風味」。果実味や酸味の明るさが際立ち、シングルオリジン豆の個性をダイレクトに表現できます。軽やかな口当たりを好むロースターや、浅煎りコーヒーに力を入れるカフェに人気の方式です。
半熱風式焙煎機:伝統と革新のバランス
ドラム式と熱風式の中間に位置するのが 半熱風式焙煎機。豆を回転させながら、ドラムの熱と熱風の両方を使って焙煎します。近代的な設計の焙煎機では、この半熱風式が多く採用されています。
特徴は「バランスの取れた自由度の高さ」。熱の入り方を細かく調整できるため、酸味を生かした浅煎りから、コクのある深煎りまで幅広く対応できます。ロースターの技術や表現力を反映しやすく、近年のスペシャルティコーヒーの世界で主流となりつつあります。
焙煎機素材の違いも味に影響
焙煎機の種類だけでなく、素材 も味わいを左右する要素です。
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鋳鉄製ドラム:蓄熱性が高く、じっくりと熱が入るため、重厚で甘みのある味わいになりやすい。
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ステンレス製ドラム:熱伝導が早く、シャープでクリアな風味を出しやすい。
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銅製ドラム:熱伝導率が非常に高く、豆の表面に素早く熱を伝えられるため、香りが際立ちやすい。
このように、同じ焙煎方式でも素材の違いによって表現できる風味は変わってきます。
大型と小型で変わる焙煎のニュアンス
焙煎機のサイズも味わいに影響します。大型の焙煎機は安定性があり、大量の豆を均一に仕上げることができます。その分、ボディ感がしっかりと出やすい傾向にあります。逆に小型焙煎機は、熱の変化が早く反映されやすいため、酸味や香りを繊細にコントロールできます。サンプルローストや個性的な小規模ロースタリーでは小型機が活躍します。
焙煎機による味わいのまとめ
・ドラム式:香ばしく重厚、甘みと苦味のバランスが良い
・熱風式:クリーンで透明感があり、酸味やフルーティさを際立たせる
・半熱風式:酸味から苦味まで幅広く対応、表現力豊か
・素材やサイズ:鋳鉄は重厚、ステンレスはクリア、小型は繊細、大型は安定
焙煎機は単なる道具ではなく、ロースターの表現を形にする重要なパートナーです。焙煎度や豆の産地と同じくらい、焙煎機の種類が一杯のコーヒーの味わいを決定づけます。
まとめ:焙煎機が創り出す多様な世界
コーヒーの焙煎は「科学」であると同時に「芸術」でもあります。同じ豆を同じ人が焙煎しても、焙煎機の種類によって全く異なる味わいが生まれます。だからこそ、世界中のロースターたちは自分の哲学に合った焙煎機を選び、理想の味を追求しているのです。
焙煎機の違いを知ることは、コーヒーをより深く楽しむ第一歩。次にコーヒーを飲むときは「この一杯はどんな焙煎機から生まれたのだろう」と想像してみると、より豊かな味わい体験につながるはずです。
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